2つに1つ、課税vs免税!~消費税の課税免税選択~

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2つに1つ、課税vs免税!~消費税の課税免税選択~


「2つに1つ、課税vs免税!」に関する解説は以下の通りです。
お役に立てれば幸いです。

目次
1.免税、原則課税、簡易課税の有利不利判定は必ず行う
2.課税事業者、簡易課税を選択すると2年間は継続が義務付けられる
3.輸出業の場合は還付の可能性が高い

免税だからラッキーとは限らない!

会社が納める税金にはさまざまなものがありますが、その1つに消費税があります。
消費税は会社が納める税金の中でも、とりわけ金額が大きくなります。
納税のために金融機関から借り入れする会社もあるほどです。
そこで、消費税の課税方法の有利不利選択を間違えると大変なことになります。
課税方法は「課税」と「免税」の2つに分けられますが、単純に免税だからよいとも言えません。
会社設立初年度の経営者として、必要な消費税の基本を知っておきましょう。

1.消費税の原則課税とは

消費税は、商品やサービスの購入者である消費者が負担し、それらの提供を行った事業者が納税する間接税です。
基本的な仕組みは、製造業者から、卸売業者、小売業者へと商品やサービスが流通するにつれて、負担が次々に転嫁され、最終的には消費者が負担することになっています。
そのままだと課税が累積してしまうため、納税義務者はその売上げにかかる消費税ではなく、差額にかかる消費税を納税することになります。
つまり、売上げで受け取った消費税額から、仕入等によって支払った消費税額を差し引いて、事業者の納付税額を算出します。
税率についてはご存知のように5%ですが、これは国税としての消費税4%と地方消費税1%の合計額です。
申告・納付は合わせて国(税務署)に対して行います。
納税額の計算式をごく単純に示すと次の通りです。

消費税納税額=(売上-売上原価-(販売費及び一般管理費-人件費-減価償却費-租税公課)-土地以外の固定資産取得額)×5%

この計算方法を原則課税(本則課税)といいますが、これ以外に小規模事業者に対する特例として簡易課税があります。 

2.消費税の簡易課税

原則課税は、売上げで受け取った消費税額から、仕入等によって支払った消費税額を控除し、事業者の納付税額を算出する方法でした。
簡易課税はもっと簡素化した方法です。
実際に仕入等で支払った消費税を無視して計算します。
厳密にいうと、5つの業種別(日本標準産業分類)に「みなし仕入率」を設定し、売上げに乗じて消費税額の概算額を算出する方法です。

みなし仕入率

計算式を示すと、次のようになります。

消費税納税額=売上×(1-みなし仕入率)×5%

なお、複数の業種に該当する売上げがある場合、主たる事業の属する分類により判定するのが原則です。
ただし、主たる事業の売上げが総売上げの75%未満になる場合は計算方法が異なるので、会計事務所に相談の上、対応を考えましょう。
もっとも、簡易課税の適用を受けるには要件があります。当年度の前々期の売上が5,000万円以下でなければなりません。
新設法人の場合は対象となる売上期間はありませんが、届出をすることで簡易課税制度を選択することができます。
具体的には、「消費税簡易課税制度選択届出書」を、設立第1期目の事業年度終了の日までに提出すれば、設立第1期目から簡易課税制度の適用が可能です。
 資本金が1,000万円未満の場合、あえて簡易課税を選択することが有利となるケースはありません。
なぜなら簡易課税には還付はありえないため、必ず納税となります。
結果、免税事業者として消費税納税額がゼロの方が必ず有利となります。

3.消費税の免税

原則課税、簡易課税とみてきました。
いずれも計算結果がプラスになる場合は納税し、マイナスになる場合は還付を受けることになります。
しかし、消費税にかかわる手続きは小規模な事業者にとっては大変、煩雑なため、申告・納税そのものを免除する「免税」制度があります。
要件は小規模なことで、具体的には当年度の前々期の売上が1,000万円未満ということです。
新設法人の場合は事業年度開始の日の資本金が1,000万円未満であれば免税事業者となることができます。
なお、金額の基準となる日は設立初年度の場合は「設立時」であるため、設立初年度の期中に1,000万円以上に増資しても初年度は課税事業者となりません。
この場合、2年目は期首の資本金が1,000万円以上となるため、課税事業者となります。
1,000万円以上の資本金にするため、増資をいつか行わなければならないというケースの時は、第2期が始まった後に増資しましょう。
そうすれば、第1期及び第2期について免税事業者となることができます。

4.課税VS免税! どっちを選べばいいの?
資本金1,000万円未満の会社は、税務署に何も届け出ないと免税事業者として扱われます。
一見、ラッキーなようですが、本当にそうなのでしょうか。
免税事業者であっても、当然ながら会社で購入する物品については、そのほとんどに消費税が課税されます。
特に事業開始の初年度は事務所を借りたり、パソコンや什器などの設備投資に少なくない支出があるはずです。
免税事業者となったばかりに、本来、消費税の還付が受けられるのにそれができないこともあるのです。
次の計算式でマイナスのときは還付が受けられます。
この場合は、初年度だけでなく第2期についても下記計算式で予測を行い、初年度と第2期の消費税額を合算した上で、結果マイナスとなるようなら「消費税課税事業者選択届出書」を設立第1期目の事業年度終了の日までに提出して課税事業者を選択しましょう。
なぜなら、初年度に課税事業者を選択すると第2期も課税事業者になってしまうためです。

 消費税の納税(還付)額=(売上-仕入-販管費(人件費、減価償却費、租税公課などを除く)-固定資産取得費)×5%

なお、簡易課税制度を選択した場合も同様の問題があります。
高額な固定資産を購入した場合、原則課税の計算式では還付になったとしても、みなし仕入率で計算されるため消費税は還付されません。
 免税も簡易課税も、一旦選択すると、最低2年間は適用を続けなければならないため、十分な見極めが必要です。
最後に、輸出を主たる事業とする場合は、消費税が還付となる可能性が高いため、次の計算式で試算し、答えがマイナスになる場合は、課税事業者を選択して消費税還付を受けましょう。
還付される消費税の金額が大きい場合は、消費税申告の計算期間を短縮して、3ヶ月毎に消費税の還付を受けることも可能です。

 消費税の納税(還付)額=(国内売上-仕入-販管費(人件費、減価償却費、租税公課などを除く)-固定資産取得費)×5%
※算式からもわかるように、輸出売上げを含まないため、答えがマイナスになる可能性が高くなります。

なお、輸入、輸出取引がある場合の消費税は取り扱いが複雑になりますので、初年度決算期末までに会計事務所と何が有利な選択か協議を行うようにしてください。

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