資本金の決め方と損得勘定~資本金によるメリット&デメリット~

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資本金の決め方と損得勘定~資本金によるメリット&デメリット~

「資本金の決め方と損得勘定」に関する解説は以下の通りです。
お役に立てれば幸いです。

これはボックスのタイトルです。
1.資本金は1,000万円未満を基本に考えること
2.現実的な資本金としては100~300万円が妥当
3.時価増資でシェアを守りつつ、返済不要の事業資金を獲得

資本金を決める際のポイントを知っておこう!

資本金とは、会社を設立して営業を始める際、最初に元入れした出資金のことをいいます。
わかりやすくいえば元手資金です。
会社設立後は、この元手資金で商品や会社の備品を購入したり、仕入代金にあてたり、経費を支払うなど、経営のために使用します。
2006年の会社法改正により、それまでの最低資本金制度(株式会社1,000万円、有限会社は300万円)は撤廃されました。
つまり、1円でも起業できることになったのです。
「それなら1円でいいじゃないか」となりそうですが、ことはそう簡単ではありません。
資本金は金額によるメリット・デメリットを知ったうえで決めましょう。

1.資本金の額は多ければいいのか

最低資本金制度がなくなったにもかかわらず、1,000万円にこだわる人がいます。
その理由は、「資本金の額が大きければ信用も上がるし、安定した経営ができる」というものです。
確かに、資本金は信用のバロメーターです。
資本金は基本的には戻ってこないお金なので、経営者・株主の事業に対する熱意がその金額として評価されますし、額が大きければ倒産するリスクが小さいという側面はあるでしょう。しかし、その一方で大きなデメリットがあることも覚悟しておかなければなりません。
税制面で負担が増えるからです。
まず、消費税が挙げられます。
消費税は、課税売上高が1,000万円を超えた年の翌々事業年度から課税されます。
しかし、資本金が1,000万円以上の場合は、初年度から課税事業者として納税しなければなりません。

つぎに、法人住民税があります。
法人住民税とは、法人に対する道府県民税と市町村民税のことです(東京都の23区内の法人は、法人都民税に一本化されています)。
この法人住民税の内訳は、均等割額、法人税割額ですが、資本金が1,000万円を超えると均等割額が上がります。
都道府県民税は2万円が5万円に、市町村民税は標準税額で5万円から13万円にアップするのです。
すなわち7万円が18万円になるということです。

その他にも、資本金の額による税務上のメリット・デメリットがありますので、別表を参照してください。

なお、許認可が必要な業種のうち、一定額以上の資本金が要件とされているものもあります。
一般労働者派遣事業の1,000万円、有料職業紹介事業の500万円、一般建設業の500万円などです。
これらの事業を営む場合は、資本金を要件を満たす金額以上にしなければなりません。
資本金の額による主な税務上のメリット・デメリット
資本金の決め方と損得勘定~資本金によるメリット&デメリット~
2.資本金の額が少なすぎるのも問題

資本金は1円でもよくなったわけですが、それで会社の経営ができるかは別問題です。
前述のように、信用という点では皆無に近いといえるでしょう。
そこで、資本金は高額でないにしろ、対外的な信用や運転資金としてある程度の金額を設定したほうが無難です。
事業を始めて取り引き先からすぐに入金があるわけではないので、その間の運転資金を考えると、初期コストと2~3ヶ月くらいのランニングコストを参考に金額を決めるのがよいでしょう。

具体的には100万円から300万円程度がちょうど良い金額です。
もっとも、資本金として資金を拠出するとすぐに回収できないことから、資本金を100万円以内に抑えて、それ以上の必要資金は社長が会社に貸し付ける方法もあります。
資本金を超えて社長の持ち出しとなった資金は、経営が軌道に乗り、余力ができた時点で社長に返済するのです。
これにより、資本金であれば会社に寝てしまうお金も早期回収できることとなります。

3.増資をして第三者から資金を得たい場合の注意

会社を設立後に第三者からの増資を考えている場合は注意しましょう。
第三者から出資を受け入れた場合はオーナー社長のシェア(持分割合)を減少させるからです。
言うまでもなく、持分割合が減ると経営上の支配権に大きな影響を与えます。
場合によっては会社を乗っ取られ、オーナーが支配権を失うこともあります。
第三者からの増資を目指したい場合、最低限、経営を軌道に乗せ、将来性のあるビジネスを構築しましょう。
会社の期待値(潜在的な将来価値)を高め、1株当たりの株価を引き上げた上で、時価増資により、出資を受け入れるようにしてください。
そうすれば、シェアを守りながら返済不要な事業資金の調達が可能となります。
もちろん事業資金が潤沢にある場合、無理して他人を株主に迎え入れる必要は全くありません。

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