急に来月、利益が出る、損失が出る場合 ~臨時の大きな利益・損失が見込まれるとき~

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急に来月、利益が出る、損失が出る場合 ~臨時の大きな利益・損失が見込まれるとき~


決算期は会社の任意で変更できる

安定したビジネスモデルなら、月ごとの売上げも経費も、あまり大きな変動はなく推移するでしょう。
しかし、例えば受注制作のような仕事だと、なかなか仕事が取れない時期がある半面、突然仕事が舞い込んできて、1,000万円、2,000万円の売上げが上がることもあります。
また、不動産の売却で多額の利益が出る場合、多額の成功報酬が発生する場合もあるでしょう。
このような、うらやましい事態になった場合に注意する点について、解説しましょう。
節税面で工夫が大事だからです。

[su_boxtitle=”ポイント”style=”glass”radius=”5″]1.お金を支払った時期と、経費となる時期は必ずしも一致しない。
税務提供を受けた時、納品されて事業供日した時に費用化。
減価償却資産になると数年以上に渡って費用化となる
2.節税のための決算前の大きな買い物は、本当に費用化できるかどうかをチェックする
3.大きな設備投資をする前には消費税還付ができるか、税理士に相談する
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1.決算前に突然、利益が出てしまったら?

利益が出ることは喜ばしいことですが、決算期末まであまり期間がないとすると、その利益に対して法人税がダイレクトにかかってしまいます。
それまでに赤字が続いていれば税金もあまり心配ないでしょうが、ちょうどトントンという感じで推移してきた場合には、突然出た利益にまるまる税金がかかるわけです。
「売上請求書を来月に回してください」などという手段で、税金を回避しようとする人もいますが、これは問題です。
納品した時点で売上げは計上しなければなりません。
税務調査の際には、厳しくチェックされてしまいます。
仮に、決算直前に2,000万円利益が出てしまった場合には、約40%、800万円もの税金を支払うことになってしまいます。
決算直前だと、役員報酬として経営者が吸い上げることも、今後の事業のための再投資をすることもできないわけです。

2.決算期を変更することもできる

何度も繰り返し利用できる方法ではありませんが、例えば3月決算で、2月以前の時点で「3月に突出した利益が上がってしまう」ことがわかった場合、2月で決算を締めることを検討してみてください。
 決算期の変更は、株主総会の決議を行い、議事録を作成し、異動届を税務署に届け出ることでできます。
この届け出は、極論すると決算期末を過ぎた4月になってからでもできなくはありません。
しかしこれは、決算が締まってから変更することになりますので、税務署から「租税回避行為だ」と指摘されるリスクがないとは言い切れません。
私のこれまでの経験では、決算期変更が租税回避行為だと税務署から指摘されたことはないので、そう心配する必要はないと思いますが、期末までに変更するのが無難でしょう。
3月の決算ギリギリになってから、2月末に決算期末を変更することが決まった場合、当然のことながら、申告期限(決算期末から2カ月以内)も4月末日に繰り上がりますので、決算作業を急いで行わなければなりません。
事務負担が増えることあらかじめ考慮しておいてください。

3.決算期変更のルール

決算期は、企業が任意で定めることができるものです。
その変更も企業が定めることができます。
ただし、12ヶ月を超える期間を1事業年度として設定することはできないというルールがありますので、期首から12ヶ月以内で設定しましょう。
前にも述べた通り、同族会社の場合、合法ではあるものの、あきらかに税金の負担から逃れようとする行為は「租税回避行為」として、「同族会社の行為の否認」という規定を適用される可能性があります。
合法の行為とはいえ、やりすぎてしまうと、目を付けられてしまいますので、注意してください。
余談になりますが、「租税回避行為」には、例えば消費税の納税から逃れるため、2年ごとに新しい会社をつくっては、計画倒産させるような会社があたります。

例えばお店の屋号は同じで、事業としては続いているのですが、お店の運営会社が変わっていく、というケースです。
最近では、インターネットビジネスの運営会社を転々とさせるケースも見受けられます。
ただし、これに関しては税務署も厳しくチェックしていますので、いずれ発覚して大きな代償を払うことになるでしょう。

4.決算期を変更することのメリット

決算期を変更して、新年度の初月に多額の利益が計上されると、有効な使い道についてじっくり考えることができます。
例えば役員報酬として吸い上げる場合には、原則役員報酬の改定が決算期末から3ヶ月以内についてのみ、認められますので、その利益を考慮して役員報酬の増額改訂ができます。
一方、金融機関へ提出する決算書を赤字にしたくない場合など、決算期を変更することで決算数字がよくなることもあります。
特に決算期末近くに多額の経費がかかる場合や急激な業績悪化などに対しては、期末まで待って赤字にするより、決算期を早めることで、黒字決算にできるようなら、検討に値するでしょう。

また、税21で少し触れましたが、消費税還付が見込まれる場合に、課税事業者の選択とともに決算期変更することによりメリットを受けることも可能です(消費税については別途課税期間の短縮という手法もあります)。
繰り返しになりますが、頻繁に利用する手段ではありませんので、ここぞという時に奥の手として活用してください。

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