小冊子 150の成功と失敗に学ぶ起業
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第1章 人生のターニングポイント ~まさかの配置転換~】


第一章 人生のターニングポイント    ~まさかの配置転換~

「いつまで寝てるの!」
 美佳の不機嫌な声が遠くから聞こえた。二日酔いで寝坊したらしい。早く支度しないと。いや昨日で会社を辞めたんだった。確か送別会で飲みすぎて……。
 真田翔一郎は8年勤めた株式会社芝園貿易IT事業部の主任という肩書きを最後にサラリーマン生活に別れを告げたのだった。
 さかのぼる事3ヶ月前、取締役人事部長から突然社員全員にメールが届いた。芝園貿易では、システムの開発及び運用・保守について、来年からは外部に委託し、管理業務のみを現IT事業部を縮小した新IT事業部が担当するという内容だった。IT技術の進歩は速く、自社内で対応するにも、能力と素質のある人材を長期に渡り安定的に確保することは無理だという経営陣の判断だった。新組織の概要と個別の辞令は11月頃発表される予定だ。

物語【150の成功と失敗に学ぶ起業】 配置転換

 翔一郎は就職難の中、新卒で芝園貿易に入社し、一貫してシステム周りの仕事を行ってきた。システム部がIT事業部と改称されたのは、入社して3年目のことだった。
 社内の基幹システムの構築から仕事を覚え、その後、自社ホームページの構築運営及び管理、そして最近ではインターネットマーケティングの企画立案からSEO対策やSEMまで、主任として部下3人と共に、ほとんどの業務に自社内で対応していた。
 この分野では社内で一番詳しいという自負もあり、会社内の評判が高いことは自他共に認めるところだった。間違っても左遷やクビになって今の仕事から離れることはないと高をくくっていた。まさか部署自体が整理縮小されるとは夢にも思っていなかった。
 翔一郎はじっとパソコンの画面を眺めながら、不思議と冷静な自分に驚いた。

30歳の今なら、培った経験を高く評価してくれる会社もあるに違いない。でもシステム開発専門の会社に今から入っても、厳しいのは想像するまでもない。かといって、一般企業では今回のような全社的な方針転換があれば、全く畑違いの部署に配置替えになるかもしれない。
  「自分でやるか……」
 そしてこれを機に独立を真剣に考えるようになった。翔一郎の実家は小さな商店を営んでいて、小さい頃から経営者の父の背中を見て育ってきたため、起業に抵抗感は全くなかった。
 預金が300万円、もし今辞めたら退職金が350万円、合わせて650万円。果たして独立してメシを食っていけるのか? 家族を養っていけるのか? 翔一郎には全く見当がつかなかった。

 そこで大学時代に同じ居酒屋でバイトしたことが縁で仲良くなった友人の佐竹孔明に相談することにした。佐竹は会計事務所でベンチャー企業の立ち上げのサポートを行っていた。
「久しぶり! 今日は翔一郎のおごりやからなぁ。頼むでぇ。」
 佐竹はこてこての関西人で、裏表がなく性格も素直なので付き合いやすい友達だ。1時間程昔話に花を咲かせ、少し酔いも回ったところで、本題を切り出した。
「実は独立しようかなと思うんだけど……。」
 翔一郎は自分の考えを口にしただけなのだが、その言葉の重みを感じていた。
「へぇーそうなんや。」
 佐竹はそう言っただけで、ビール片手に生ハムに夢中である。構わず今自分が所属している部署が整理縮小の対象となり、今後は外部業者が実働部隊としてIT事業部の業務を行い、もしIT事業部に留まったとしても、社員の仕事はプロジェクト管理が多くなるだろうと言われていることを説明した。

 佐竹はやっとこちらを向き、
「それで、何するねん?」
 と言ったと思ったら、
「お姉ちゃん、生ビールお替り!」
 と店員の女性にビールを注文した。
 佐竹の問い掛けに対し、
「会社の先輩が既に独立していて、仕事手伝ってよと言ってくれているし、自分でもシステム開発の仕事を取っていけると思う。」
 と答えた。
「何か、事業計画書みたいなもんないの?」
「えっ?」
 会社では、役員会を通すための企画書を何度か作ったことがあるが、事業計画書は作ったことがなかった。
「あかんあかん、難しいこと考えんでもえぇから、簡単に書いてみいや。」
 翔一郎は何を書けばよいのか分からなかった。佐竹はお替りしたビールを片手に、紙ナプキンに何やら書き始めた。紙ナプキンが字で覆い尽くされたところで、

「じゃぁ今日はご馳走さん!」
 と言って、紙ナプキンと飲み代の伝票を翔一郎に渡すと、さっさと帰ってしまった。
 翔一郎は紙ナプキンを手にとった。(別紙1参照)

物語【150の成功と失敗に学ぶ起業】 メモ1

〈主な登場人物〉
  株式会社ブランニュースター
    代表取締役 真 田 翔一郎(主人公)
    取 締 役 真 田 美 佳(妻)
  株式会社ネットバリュー  
    代表取締役 山 崎 隆 一(元上司)
  税理士法人アシスト  
    税 理 士 佐 竹 孔 明(大学の友人)

物語【150の成功と失敗に学ぶ起業】

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