自宅オフィス関連支出の費用化 ~考え方をマスターするのが早道~

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自宅オフィス関連支出の費用化 ~考え方をマスターするのが早道~


自宅をオフィスにするなら忘れたくない節税テクニック

起業の際は、自宅をオフィスとするケースも多いでしょう。自宅兼オフィスの場合、経費とするには注意点もありますので、確認しておきます。自宅をオフィスにする場合、次の3つのケースがあります。

  1.賃貸(法人名義)の場合
  2.賃貸(個人名義)の場合
  3.持ち家(個人名義)の場合

 以下からは、ケース別に費用化する方法を紹介しましょう。

ポイント
1. 自宅をオフィスにする場合、賃貸物件なら法人契約できないか検討する
2. 自宅をオフィスにする場合、面積按分で家賃の費用化額を決定
3. 水道光熱費など、その他の共有費用も面積に応じて按分し、費用化する
4. 社宅を使った節税は今後規制される可能性があることに留意

1.賃貸(法人名義)の場合

法人名義でマンションなど賃貸契約した場合、法人の登記を自宅にしたか、自宅以外にしたかで多少、変わってきます。

①法人登記を自宅にした場合

仕事をする部分(面積)を家賃に按分します。例えば家賃が30万円で、仕事をする部分が全体面積の50%だった場合、15万円(30万円×50%)を事務所家賃として費用化するわけです。
残りのプライベート部分は、社宅の費用として計上します。この場合、必ずプライベート部分の家賃の一部(5~10%程度)を自己負担する必要があります。
前のケースでいえば、プライベート部分の家賃は15万円(30万円-15万円)ですから、7,500円(15万円×5%)~1万5,000円(15万円×10%)は自己負担し、残りの14万2,500円~13万5,000円を社宅として費用化するわけです(※税法上の社宅の費用化について今後規制される可能性があります)。

②法人登記を自宅以外にした場合

仕事部分は面積割合によって事務所家賃とし、プライベート部分は一部を自己負担して社宅費用とする方法です。これは前述と同じ方法ですが、法人登記を自宅以外にした場合、もう1つ方法があります。
それは、家賃全体をプライベートとし、社宅家賃で経費化する方法です。もちろん、必ず一部を自己負担としてください。

法人登記を自宅以外にした場合
2.持ち家(個人名義)の場合

③法人登記を自宅にした場合

持ち家の場合、少し複雑です。法人の本店所在地を自宅にした場合、会社と個人で賃貸借契約書を結び、会社から事務所の家賃を個人に支払いましょう。そうすると、事務所家賃が費用化できます。
ただし、この場合、個人には不動産所得が入ることになりますので、注意が必要です。もちろん、この不動産所得は申告する必要があります。この個人の不動産所得に関して税金をかからないようにする、または少なくするためには、自宅建物部分の減価償却費を算出する必要があるため多少複雑です。そのため、家賃をいくらにすればよいかについては、税理士などに相談してください。
プライベートの部分に関しては、費用化することはできません。

④法人登記を自宅以外にした場合

法人登記を自宅にした場合と同じです。必ず、賃貸借契約を結ぶ必要がある点に注意してください。

法人登記を自宅以外にした場合
3.賃貸(個人名義)の場合

⑤法人登記を自宅にした場合

個人名義の賃貸物件を本店所在地に法人登記をした場合、仕事に使用する部分については事務所家賃として費用化することができます。
ただし、プライベートの部分を社宅費用にするのは危険です。税務署に認められないと思われますので、自宅部分を費用化したい場合は、賃貸契約を法人名義に変更しましょう。

⑥法人登記を自宅以外にした場合

③の法人登記を自宅にした場合と同じです。仕事部分は事務所家賃になり、プライベート部分は費用化できません。

4.役員が使える裏技

述の①、②のケースの場合、役員が使える裏技があります。このテキストをご覧になっている方は経営者(役員)の方がほとんどだと思います。役員の場合、社宅の費用化には制約があり、マンションの場合99㎡(一戸建等木造の場合は132㎡)以下の小規模住宅である必要があります。仮に自宅が99㎡超の場合、事務所使用分を認識することで、社宅として使用する部分が99㎡以下になります。※マンションの場合、共有スペースの面積も99㎡に考慮する必要があります。
すると、社宅としてプライベート使用する部分の面積に応じた家賃の80~90%を社宅家賃、そして残りの事務所使用分も事務所家賃として経費化することができます。
ちなみに社宅のプライベート使用部分が99㎡超(マンション)の場合は、実際の家賃の50%を自己負担する必要があります。さらに裏技の裏技として、99㎡超だったとしても、仕事に使っている部分(通達上は公的使用に充てられる部分と表現されています)があれば、50%×70%=35%以上を自己負担していれば、残りは費用化することができます。※社宅について詳しくは税14を参照してください。

5.その他、水道光熱費などの費用化

自宅を事務所とすると、水道光熱費、通信費、セキュリティ費用など、仕事とプライベートで共有するものがあります。これらも、面積に応じた按分で経費化できます。もちろん、面積以外でも合理的な按分方法があれば、その方法でもかまいません。
新聞に関しては、会社名義で契約し、全額費用化しましょう。個人名義でも指摘されることは少ないと思いますが、会社名義のほうがベターです。また、自宅の備品で仕事に転用するもの、例えばプライベートのパソコンを、仕事用に使う場合などには、その備品を会社に売却して費用化します。ヤフーオークションなどで相場を調べて、時価で売却するとよいでしょう。

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