憧れの社宅生活で節税 !? ~借り上げ社宅による節税~

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憧れの社宅生活で節税 !? ~借り上げ社宅による節税~


借り上げ社宅の仕組みを理解して、賢く活用しよう!

経営者にも当然仕事とプライベートがあり、仕事に関する支出は会社経費として会社収益から差し引くことができます。
一方、プライベートな支出を会社経費とするためには、役員給与のような形で支給を行い、所得税・住民税及び社会保険料の負担を行った上での残金が利用可能金額となってしまいます。
個人に対する課税は超過累進課税方式のため、高額になればなるほど、税金負担はその重みが増します。
ここでは、所得税・住民税課税を受けることなく、会社経費とできる借り上げ社宅制度について説明していきます。

ポイント
1. 法人契約借り上げ社宅は税金・社会保険料の節約に効果大
2. 役員社宅は小規模住宅(マンションの場合、共用部分を含めて 99㎡以下)が吉
3. 従業員の場合、目安として実際家賃の10%程度を法定家賃として従業員が自己負担
4. 役員の小規模住宅の場合、目安として実際家賃の20%程度を法定家賃として役員が自己負担

1.借り上げ社宅は実質賃金アップと同じ

住宅手当を支給した場合、当然所得税が課税されます。
この点、社宅ついては、会社から提供される社宅の使用を金品の収入と同等と認められる経済的利益としてとらえます。
つまり、社宅を貸して家賃をまったく徴収しなかったり、通常よりも低い額の家賃等しか徴収しない場合、通常支払われるべき賃貸料の額(「通常の家賃」としておきます)または、適正家賃と実際に徴収している家賃等の額との差額に相当する金額について現物給与の支給があったものとして、給与課税されることになります。
この場合、通常の家賃の50%(これを法定家賃とします)以上を徴収していれば、課税されません。
通常の家賃とは、次の3つの合計額とされています。

イ.その年度の家屋の固定資産税の課税標準額×0.2%
ロ.12円×その家屋の総床面積(㎡)÷3.3(㎡)
ハ.その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%

上記の計算を行うためには、住宅の貸主から固定資産税評価額が分かる資料を入手する必要があります。
しかし貸主には提供する義務がないため、入手することができないケースが多いのが現状です。
その際、実務家の間では、過去の経験則から実際の家賃の5~10%の金額を法定家賃とみなして、社員から徴収する方法を取ったりします。
この方法はあくまでも簡易計算のため、税務リスクが生じないようにするには極力10%に近い法定家賃を徴収するようにして下さい。

どのような場合に課税されるか、3つに分けて考えてみます。

(1)社員負担家賃がゼロの場合

 通常の家賃の全額が給与所得として課税されます。

(2)通常の家賃の50%未満しか徴収していない場合

 (通常の家賃-実際に徴収した賃貸料)を給与所得として課税します。

(3)通常の家賃の50%以上の賃貸料を徴収している場合

 給与所得として課税されません。
例えば、借り上げ社宅(家賃10万円の物件)で、法定家賃(通常の家賃×50%)が1万円の場合に、社員から1万円を徴収すると、(3)に該当し、課税されないことになります。
一方、社員が賃貸人として支払う家賃10万円から1万円を差し引いた金額を9万円住宅手当として支給したとします。
この場合、9万円は給与所得として課税され、社員の実質的な手取金額は少なくなるといえます。
社宅の方がメリットがあるわけですが、社員から徴収する金額が法定家賃を下回らないようにすることが大切です。

2.役員も一定額の家賃を徴収すれば課税されない

前掲の計算方法は原則社員に適用されるものです。
経営者(役員)に社宅を貸与する場合も、一定額以上の家賃を受け取っていれば課税されません。
ただ、役員の場合は、通常の家賃は社宅の形態で3つに区分して計算します。
(1)小規模住宅の場合

小規模住宅とは、家屋の床面積が132㎡以下のものをいいます。
木造家屋以外の家屋は99㎡以下(区分所有の建物は共有部分の床面積を按分し加えたところで判定します。)であり、マンションはこれに該当します。
通常の家賃は、社員と同様、上記のイ、ロ、ハを合計したものになります。
(2)小規模住宅以外の場合

社宅が会社の所有物件の場合と借り上げ社宅の場合で異なります。
自社所有の場合は、つぎの額となります。

(ニ.+ホ.)÷12……(A)
ニ.その年度の固定資産税の課税標準額×12%(木造家屋以外の家屋は10%)
ホ.その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%

借り上げ社宅の場合、上記の自社所有の場合の額(A)と、借上社宅の家賃の50%相当額のいずれか多い方が法定家賃になります。
通常家賃の50%の方が高くなるため、小規模住宅に該当しない場合、実務上実際の家賃の50%(法定家賃)を本人負担額と設定しています。
なお、その借入住宅に会社のために使用する公用部分(取引先の重役を自宅に招いて接待するためのスペースなど)があれば本人負担額を法定家賃の70%にすることができます。
すなわち50%×70%=35%を本人負担額とすればOKです。
(3)豪華社宅の場合

240㎡を超える豪華な役員社宅や、240㎡以下でもプールなどの設備や個人的な趣味嗜好が著しく反映した設備のある豪華な役員社宅には、上記の算式は適用されません。
通常の相場並みの賃貸料(借り上げ社宅の場合、実際の賃料)が法定家賃とされますので注意が必要です。

※注意事項
昨今借り上げ社宅について税務調査で問題視されるケースが出てきているという話もあるため、借り上げ社宅制度は会社が制定した福利厚生制度の一つとして、その利用方法は会社の内規で定めるようにしてください。
節税効果は大きいのですが、税務上留意しなければいけない点があるため、専門家のアドバイスのもと、慎重に実施してください。

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読者の皆さまの個別要因及び認識や課税当局への主張の仕方により、税務リスクを負う可能性も十分考えられますので、実務上のご判断は、改めて専門家のアドバイスのもと、行うようにして下さい。
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