出向と転籍の給与はどこまで損金算入が認められているのか?

出向と転籍の給与はどこまで損金算入が認められているのか?
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出向と転籍の給与はどこまで損金算入が認められているのか?


従業員を出向させる場合と転籍させる場合では、労務上の取り扱いが異なることをご存じですか?また、出向や転籍に伴って発生する給与については、どこまで損金算入が認められているのでしょうか?出向と転籍それぞれの労務上の取り扱いに触れながら、発生する給与についてどこまで損金算入できるのかを解説していきます。

目次
|-出向と転籍の違い
– 出向とは
– 転籍とは
– 出向と転籍の共通点
|-出向をさせる場合の給与
– 格差補填は損金算入できる
– 格差補填に当てはまるケース
– 出向先で役員となる場合の注意点
|-転籍させる場合の給与
– 退職金という問題
– 転籍元企業と転籍先企業のどちらが支払うのか
|-まとめ

|-出向と転籍の違い
まずは、出向と転籍の労務上の区別について確認していきましょう。

❖出向とは
出向とは、現在の企業に在籍をしたまま出向先企業にて勤務することをいいます。
会社内で行われるのが「配置転換」であるのに対し、会社という枠を超えてなされる配置転換が「出向」であると考えることができます。

❖転籍とは
転籍とは、現在の企業との雇用契約関係を終了し、出向先と新たに雇用契約を締結することをいいます。
本来の出向は「在籍出向」という形で表現されるのに対して、転籍は「移籍出向」と区別されることがあります。

❖出向と転籍の共通点
どちらも社外勤務である点で共通しています。
労働問題に発展するリスクを最小限にするために、
・就業規則の整備
・本人との同意
を実施するのが一般的です。

|-出向をさせる場合の給与
❖格差補填は損金算入できる
出向元企業から従業員を出向させる場合、労務上のトラブルを回避するためにこれまでどおりの給与賃金を保証しているのが普通です。
しかし出向先企業の事業規模が出向元企業よりも小さい場合は、出向元企業が出向者に対して格差補填を支払うケースが出てきます。
出向前の待遇を維持するために支払う給与については、損金算入することが認められています。

❖格差補填に当てはまるケース
この「格差補填」に該当するケースは、出向元企業と出向先企業での給与条件の較差を補填する目的で支給した給与や賞与が当てはまります。
出向元企業から出向従業員へ直接支払うだけでなく、出向先企業を経由して支給することによっても、どちらも損金として算入することが可能です。

❖出向先で役員となる場合の注意点
従業員が出向先企業で役員となる場合は、下記2点を満たす場合において役員給与として取り扱う点で注意が必要です。
・出向先法人の株主総会等でその役員の給与について決議がされていること
・出向者に関する出向期間や給与負担金の額が出向契約等で定められていること

|-転籍させる場合の給与
❖退職金という問題
従業員を転籍させる場合については、少し複雑な状況になることが考えられます。
なぜなら、転籍は在籍企業との雇用契約を一度終了させることになるため「退職金」の支払いという問題が出てくるからです。

❖転籍元企業と転籍先企業のどちらが支払うのか
転籍者に対して退職金を支払った場合は、退職給与として取り扱い、転籍元企業と転籍先の企業どちらが支払っても問題ありません。
ただし、勤続年数等を鑑みて転籍元の企業が明らかに過大な金額を負担したと認められる場合は、寄付金として取り扱います。
寄付金の贈与を受けた企業は受増益が計上されますが、同時に退職金として費用も計上されますので、損得は基本生じません。

寄附金が損金算入できるか、消費税が課税されるかについては『寄付金に消費税は課税される?寄付金と消費税に関するよくある3つの質問』 の記事で詳しく解説しています。
是非ご確認ください。

|-まとめ
従業員を出向または転籍させる場合に、出向先(転籍先)企業で役員となるケースもあります。
役員報酬の損金算入に関する詳細は『役員給与を損金にするためには?企業担当者が知っておきたい基本ルール3選』 にてご確認いただけます。
こちらも合わせて確認しておくと安心です。

参考URL
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_09.htm
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_07.htm
http://www.jil.go.jp/rodoqa/07_jinji/07-Q16.html

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